はじめに
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、税務調査の件数が減少しておりましたが、令和3年の所得税の調査の状況について、国税庁より「令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」が公表されました。
今回は、令和3年中に税務調査がどの程度行われたのか解説したいと思います。
令和3年における所得税の調査の状況
国税庁の「令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によれば、調査件数及び申告漏れ等の件数の実地調査については、特別調査・一般調査が24,000件であり、着眼調査が7,000件で、合計31,000件でした。
このほか、簡易的な接触の件数が568,000件とのことです。
これらの調査等の合計件数600,000件のうち、申告漏れ等の調査が317,000件でした。
実地調査の件数について、令和2年は502,000件であったため、調査件数としては回復傾向になっておりますが、依然として新型コロナウィルス感染拡大の影響により低水準となっています。
なお、追徴税額は合計803億円で、そのうち特別調査・一般調査によるものは777億円で、着眼調査によるものは26億円でした。
令和2年では、追徴税額は合計533億円で、特別調査・一般調査によるものは514億円で、着眼調査によるものは19億円でした。
前年度に比べると増加傾向となっております。
富裕層や無申告者に対する調査の状況について
令和3年における富裕層に対する実地調査は、2,227件とのことです。
申告漏れ所得金額の総額が839億円で、一件あたりの申告漏れ所得金額は過去最高の37,670,000円とのことです。
また、一件あたりの追徴税額は過去最高の10,670,000円となっております。
令和2年の申告漏れ所得金額が487億円で、一件あたりの追徴税額は5,430,000円なので、追徴税額としては前年比でおよそ2倍となっております。
また、無申告者に対する実地調査の状況として、令和3年は3,828件に対して、令和2年では2,993件でした。
一件あたりの申告漏れ所得金額は令和3年は29,230,000円であり、令和2年では25,650,000円に比べて3,580,000円増加しております。
また、一件あたりの追徴税額は、令和3年は過去最高の4,970,000円であり、令和2年は2,920,000円との事です。
インターネット取引を行っている個人に対する調査の状況について
インターネット上のプラットフォームを介して行うネット広告やデジタルコンテンツ、ネット通販、ネットオークションや暗号資産等の取引を行っている個人に対する調査状況は下記の通りでした。
令和3年中の実地調査は839件であり、一件あたりの申告漏れ所得金額は13,820,000円でした。
令和3年の一件あたりの追徴税額は2,660,000円で、追徴税額の総額は22億円でした。
令和2年は、追徴税額の総額としては19億円だったので、前年比で3億円増加しました。
令和3年の暗号資産を行っている個人に対する実地調査は444件となっておりました。
一件あたりの申告漏れ所得金額は36,590,000円で、申告漏れ所得金額の総額は162億円でした。
一件あたりの追徴税額は11,940,000円で、追徴税額の総額は53億円となっておりました。
令和2年における追徴税額の総額としては、34億円だったので前年比で19億円増加しました。
さいごに
以上より令和3年は令和2年に比べて、税務調査の件数が増えてきていることが分かります。
私自身も最近、法人のお客様の税務調査に立ち会ったばかりで、新型コロナウイルスの流行が収まってきている事に比例して税務調査の件数も徐々に増えてきていると実感しております。
令和5年10月からはインボイス制度も導入される為、今後はますます税務調査の件数が増えてくると考えられます。
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