はじめに
株式とは、会社に出資をすることにより、会社を所有することができる権利のことをいい、株式を所有することによって、会社の意思決定ができるほか、会社に利益が出れば、利益に対し配当を受け取ることができます。
株式を購入する場合は、証券会社等を通じて購入することが多いですが、普段私達が購入できる株式は、証券取引所に上場している上場株式となります。
一方で、我が国の企業のうち、非上場企業の割合は99.99パーセントであり、非上場企業の株式を取得する機会は、相続等先代の社長から株式を受け継ぐ場合に限られます。
もし、非上場株式を取得した場合、その株式の株価はいくらなのかと迷われる方も多いかと思います。そこで今回は、非上場株式をどのように評価するかについて見ていきたいと思います。
非上場株式の評価方法
非上場株式の評価方法として、現行制度上認められるものとしては、下記の通りです。
① 配当還元方式(配当金額から逆算して株価を評価)
② 類似業種比準方式(国税庁が発表している市場の株式を基に計算)
③ 類似業種比準方式+純資産価額の併用方式
④ 純資産価額方式(決算書の貸借対照表を基に株式を評価)
非上場株式の評価方法は、上記の4通りとなります。
このうち、配当還元方式と純資産価額方式について補足します。
配当還元方式の場合は、当初の一株あたりの出資額に加え、これまでに株主に対して配当を行ってきた場合に、配当金額の利率で還元して株価を評価します。
そのため、過去に株式の配当がない場合は、出資額と株価は概ね一致します。
純資産価額方式の場合は、基本的に決算書の貸借対照表の金額で評価を行いますが、上場株式を所有している場合には評価日現在の時価、土地については評価日の年の路線価、建物については固定資産税通知書に記載のある評価額、会社契約の生命保険金があれば評価日における現在の解約返戻金を含めて評価を行うこととされています。
つまり、個人の方に相続が発生した時に、その財産の評価を行いますが、会社が所有している財産評価を会社でも同じように行うこととなります。
上記①から④で株価が高くなる順位としては、一般的に①<②<③<④ となります。
ただし、①配当還元方式の場合は、いわゆる身内の方以外に譲渡(もしくは贈与)する場合に限り、適用されることとなり、身内間での譲渡(贈与)の場合は②、③、④のいずれかの方式となります。
非上場株式の特徴
非上場株式については、取得者の立場(親族か親族以外の人か)により、株式評価が異なります。
その理由としては、その会社の株式を保有している方が、会社に対する支配力(どれだけ株式を保有しているか)により、株式評価は異なります。
会社の株式を多く保有している人ほど会社に対する支配力は強くなることから、株価は高くなり、少数の株式しか保有していないとなると、会社に対する支配力は弱まることから、株価は低くなります。
また、非上場会社の場合は、複数の親族が分散して株式を保有していても、分散している株式の株主が親族同士であれば、その親族同士は一つの株主のグループとして判断されることから、親族の方に株式を譲渡する場合は、親族以外の方に譲渡する場合と比較して、株価は高くなります。
そのため、先代の社長から後継者への株式譲渡(贈与)の場合は、親族同士の譲渡(贈与)であれば、会社に対する支配力は継続するであろうと判断され、株価は高くなり、先代の社長から親族以外の方への譲渡(贈与)は、親族同士での譲渡(贈与)でなく、先代の社長の株式保有数が減少することにより、先代の社長の支配力は弱まることから、株価は低くなります。
先代の社長が後継者に株式を譲渡(贈与)する場合、毎年利益が多額に出ている場合は株価が高くなり、株式における相続税や贈与税、譲渡所得の負担が大きくなります。
そのため、株価を下げる方法としては、先代の社長に退職金を支給する、不動産を所有している場合は大規模修繕や建て替えを行うといった対策が挙げられます。
さいごに
非上場株式の評価や事業承継の株式対策については判断に迷うことが多く、税理士等の専門家であっても、答えが何十通りにもなる複雑な内容です。
そのため会社だけで判断することなく、税理士などの専門家へ必ず相談する必要があります。
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