はじめに
今回は年末調整の誤りやすい点について、解説していきたいと思います。
給与担当者は年末調整は年に1度の作業となる為、毎年どのように処理すればいいのか忘れてしまうこともあるかと思います。
そこで今回は、年末調整の誤りやすいポイントについて年末調整で使用する資料ごとに紹介していきたいと思います。
扶養控除等(異動)申告書関係の誤りやすいポイント
扶養控除等申告書は、扶養控除の適用を受ける際に必要になる書類です。
扶養親族が16歳以上18歳以下または、23歳以上69歳以下の場合には38万円、19歳以上23歳未満の親族がいる場合には特定扶養親族として63万円の所得控除を受けることが可能になります。
しかし、控除対象扶養親族については年間収入が103万円以下でなければ扶養控除を受けることが出来ないため、従業員の子供がアルバイトなどで稼いだ給与が103万円を超えている場合には対象になりません。
よって、従業員は子供の収入を正確に把握しておく必要があり、実務では子供の収入が103万円を超えているのに、扶養控除の適用を受けているといったケースもしばしば見られるので、扶養親族の収入確認をしっかりとするようにしましょう。
配偶者控除等申告書関係の誤りやすいポイント
配偶者控除は、従業員の年収が1,000万円以下であり、さらに、配偶者の年間収入が103万円以下であれば、最低13万円から最高48万円までの配偶者控除の適用を受けることが可能です。
しかし、こちらについても前述した扶養控除同様に、配偶者の収入の確認漏れなどから正しい配偶者控除額を適用出来ていないケースも多々見受けられるので、こちらについてもしっかりと配偶者の収入確認をする必要があります。
基礎控除・所得金額調整控除申告書関係の誤りやすいポイント
この基礎控除・所得金額調整控除申告書とは、令和2年分の年末調整より新設されたものです。
所得金額調整控除とは、給与の収入金額が850万円超で、23歳未満の親族や特別障害者の扶養親族などがいる場合に一定の要件を満たした上で、所得金額調整控除申告書を勤務先に提出することによって適用が可能になるというものです。
所得金額調整控除の適用を受けるには、所得金額調整控除申告書の提出が必要であり、制度としては令和2年分より新設されたことから、提出漏れが多いので、注意が必要です。
住宅借入金等特別控除申告書関係の誤りやすいポイント
住宅ローン控除の適用は、従業員が住宅を購入するためにローンをした年の2年目以降は年末調整で住宅ローン控除の適用を受けることが可能となります。(1年目は確定申告するひつようがあります。)
住宅ローン控除の適用を受ける際に誤りやすいポイントとしては、従業員が住宅ローンの借り換えを行った場合に、年末残高の計算を誤るケースが多いので、注意が必要です。
借り換えを行った場合には、原則として新しい借入金については住宅ローン控除の対象とはなりません。
しかし、新たに借り入れた当初の借入金額が、最初に借り入れた当初の借入金額を上回っている場合には、年末残高の計算は次の算式で求めます。
➀新たな借入金の年末残高×②借り換え直前の当初の借入金残高÷③借り換えによる新たな借入金の当初金額
上記の計算を行わないと、住宅ローン控除の控除額が誤ってしまうので、注意が必要です。
さいごに
今回は、リクエストのあった年末調整のミスしやすいポイントについて解説しました。
年に一度ですが、従業員の給料に関わる非常に重要な年末の業務になりますので、今回の記事を参考にして頂き、年末調整の最終確認として参考になれば幸いです。
コメント
年末調整について
扶養控除申告書欄や配偶者控除申告書欄に、所得の見積額を記載する欄がありますが、一般の納税者には、所得と収入の定義が混在することにより、誤った所得の判定をしてしまうことがしばしば見受けられます。そのため、私が顧問先に年末調整の説明をする際は、収入金額を記載していただくようお願いをしています。収入金額と所得の内容をヒアリングすることで、扶養控除判定誤りのミスはある程度防げるのではと思います。
また、最近の改正では、寡婦控除とひとり親控除の誤りも見受けられ、男性であるにもかかわらず、親御さんを扶養親族として、扶養控除と寡婦控除を重複して適用を受けられるという、誤った処理をしないよう指導する必要があります。
コメントありがとうございます。
収入と所得を誤って記載される方も多いですよね。
たしかに私もその点について、ご指摘させていただくことはあります。
扶養控除と寡婦控除についてもたまに見受けられるので、その点も注意が必要ですね。